活用期に入るAI
SHOPTALK 2025 FALLへの参加
SHOPTALK 2025 FALLに行ってきました。
3月にSPRINGにも行ったので、どのくらいアップデートがあるのかはちょっと心配でしたが、結果的にはこの半年でまただいぶ状況が変化しており、いろいろ得るものがありました。
前回SPRINGはリテールメディアがメイントピックでしたが、今回はAIがメイントピックで、トラックがAIR、WATER、FIRE、EARTHの4つに分かれていて、AIRはまるまるAI(AIとAIRをかけていると言ってましたが)一色で、私は今回は3日間ずっとAIRに張り付いてみました。
また前回は2名で参加してずっと同じトラックを聴講していたのですが、今回は3名で参加して初日は3名でAIR、二日目は二手に分かれて、三日目は3人別々のトラックに分かれたため、かなりの数のセッション(27セッション)をカバー出来たのも良かったです。
余談ですが、聴講の際にotterを活用したのはSPRINGと同じですが、リアルタイムの書き起こしよりも、後からインポートし直した方が明らかに書き起こしの精度が高い事が分かったので、リアルタイムの書き起こしはあくまで聴講中の補助として使い、社内共有のレポートは事後に再度書き起こしし直した事で、よりクオリティの高いレポートを作ることができました。
生成AIの位置づけの変化
さて、SPRINGと色々トピックに変化が見られましたが(実際、登壇者がある頻出ワードについて「こんなワードは半年前は誰も使っていませんでしたが」と言ってました)、SPRINGはGenAIだったものがFALLはほぼAIと表現されており、もはや生成AIという新しいバズワードではなく、当然のように活用されるツールとして議論されており、いよいよECもAIフル活用時代に入りつつあるという感じです。
SPRINGではまだ、生成AIがインパクトのあるツールで、どう今後のコマースを変えていくのか、というテック色の強い話題が多かった印象でしたが、今回はマーケティングだけではなく、オペレーションにどう活用するか、またどうデータを整理するか、という実践論も多く見られたのも印象的でした。
生成AI活用の新潮流とCX向上
そうした中で、AIRトラックで非常によく使われていたワードが、「Agentic」「Contextual」「Authenticity」あたりです。
どのワードも、AIを便利な道具として使い、どうCXを高めるか、ということを表現していると言えます。
Contextualについては、SPRINGでもConversational Searchなどの文脈で同様の議論はされていましたが、UIとして使いやすくするためのAIから、会話(対話)によっていかにユーザーからより情報を引き出すか、というインプットを増やすための道具として使うことにより、より背景を踏まえた良い検索結果を表示できるか、というCXを高めるためのツールへと変化してきているようです。
Agenticについては、Agentic AIやAgentic Commerceなどの組み合わせのワードでの使われ方が多かったですが、いずれにしても今後はChatGPTやGeminiといったポータルとしての生成AIだけではなく、ECサイト側に組み込まれて活用される流れが一気に加速すると思われます。
もちろん、(生成)AIにはGEOという新たなマーケットもすでに立ち上がり始めており、流入としてのAI、CX向上(コンバージョン改善)のためのAI、オペレーション向上のためのAIなどであって当然のツールとして活用され始めています。
そういえば、今回のFALLでは「LTV」をより重視したパラメーターとして捉えているスピーカーが多く、また頻出ワードにAuthenticityがあることからも、やはりマーケティングの行き着くところはCXの向上であると言えるでしょう。
ZETAにとって追い風となるAIの活用
さて、GEOしかりAgentic Commerceしかりですが、こうしたAIの活用は当社にとっても大変追い風です。
まずGEOについては、すでに「ZETA GEO」というソリューションを発表済みですが、生成AIによりインデックスされるためには、良質な検索クエリの分析、そして良質なQ&Aの蓄積が必須であり、当社はそのどちらにおいても強みを持っています。
今回はAgentic Commerceがなぜ当社にとって追い風なのかについて、少し触れてみたいと思います。
ChatGPT(最近若手のスタッフがチャッピーと呼んでいるのを聞きましたが、確かにチャットジーピーティーよりだいぶ言いやすいので最近は真似しています)にちょっと複雑なことを相談すると、即答ではなく外部データを参照に行き始めますが、そうして返ってくる答えは正直自分でネットで調べた内容より劣っているケースが多い(Deep Researchだとまた違うかもしれませんが)という経験がある人は多いのではないでしょうか。
先日、4つくらいのパラメーターを指定して、それらに該当する株式銘柄を出して、とお願いしてみたところ5分ほど粘った挙句「できませんでした」的な回答でちょっと驚きました。
これまでの生成AIは、ChatGPTなどが事前に学習したデータを使って質問に回答、もしくは学習データが存在しない場合にはその場で調べに行って処理する(このケースだと現状あまり回答のクオリティが高くない)わけですが、Agentic AIが広まってくると、学習データが存在しなくてもその場で「優良なデータを返却してくれそうなサイトのAIに質問に行く」というケースが増えるということになります。
AI同士がつながるA2Aへの発展
その昔、P2Pという概念が一時期流行ったことがありましたが、Googleが今年4月に提唱したA2A(Agent2Agent)もこれと近いものがあります。
世界中にあるありとあらゆるサイトのデータをChatGPTやGeminiがインデックスして分析するのは現実的ではなく、今後はそうしたポータルAIは「どこに重要なデータがあるか」をメインに学習し、その具体的なデータについては都度サイトのAIに問い合わせて教えてもらうという、分散型として発展していくということです。
P2Pは活用するコンピューターが個人のパソコンだったことから、セキュリティその他の面であまり現実的ではありませんでしたが、A2Aは分散しているリソースも企業が管理運営しているコンピューターであることから、P2Pよりも現実味があると言えます。
もちろん、段階的にはA2Aよりも先に、昨年11月にAnthropicが提唱したMCPの実装が進み、その後A2A(かもしくはそれに似た概念)の実装が広がると予想されます。
MCPなどは一時期盛んだったREST APIなどと本質的なアプローチは変わっていないとも言えますが、だいたいネットというものは中央集権で進化し、分散処理で発展することの繰り返しです。
さて、そうなると各ECサイトにおいて、ポータルAIからの問い合わせにどう良質なデータをリアルタイムで返却するかが重要になってくるわけですが、これこそまさに当社が提供しているハイエンド検索エンジン「ZETA SEARCH」の活用機会の増加への大きな追い風であると言えます。
SHOPTALKから見るECトレンドと今後のZETA
Contextual Search(経緯や背景を踏まえた検索)はすでに当社が取り組んでいるジャンル、Agentic Commerceではより当社の検索エンジンの需要が高まりそう、AuthenticityはまさにクチコミやQ&Aが活用されるシーン、GEOにおいても検索クエリやQ&Aの蓄積と分析が重要と、AI時代にはこれまで取り組んできた製品群と、それらが扱うデータの重要性が一気に高まりそうです。
ただ、これらは偶然ではなく、結局のところ生成AIなどの高度で高速な処理を可能とするツールが普及すればするほど、マーケティングにおいてはより本質的な取り組みが推進しやすくなるのは当然で、「ZETA CXシリーズ」というシリーズ名にもあるように、CXの向上をひたすら追求してきた当社にとってはその取り組みが報われつつある展開が訪れている、と捉えています。
一方で、当社としても新たな研究開発が急務であり(たとえばMCP及びA2Aの実装や、さらに進化したConversational Searchの開発など)、気は抜けません。
そういえば余談ですが、あるセッションで、「これまでパーソナライズと言われていたのは単なるセグメンテーションです。シカゴ在住のヨガが好きな34歳女性は全部同じ、なんていうことはありません」というジョークがありましたが、これはつまり、今後ソリューションベンダーに期待される処理の解像度が一気に上がるということだと思います。
当社としては、ハイエンド検索を中心に据えたビジネス展開について今後より一層の取り組みを進めていく予定です。
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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之
【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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