人工知能 ブームの功罪


バズワード化による弊害

ディープラーニングが注目を集め、というトピックは何度か触れましたが、どうやらもっと広いくくりで 人工知能 が今年のバズワードになったようです。

クラウド、O2O、ビッグデータ、オムニチャネルマーケティングオートメーションと毎年何らかのバズワードは登場しますが、今回の 人工知能 もなかなかでかいバズワードです。
バズワード化してしまうと、情報が玉石混交になってしまいます。
何が玉で何が石なのか、導入する側にとってのハードルが上がります。

私もかつてはエンジニアだったので、ソリューションやシステムというのは導入する側だったのですが、やはり「売り込みが激しい」のはマイナスな印象でした。
まずい飯屋ほど呼びこみが激しいというやつです。

人工知能宣伝

ただ自分がソリューションを提供する側になってみると、「 人工知能 ! 人工知能 !!」とさかんにアピールする企業を横目で見つつも、「実際にソリューションとして成果が上がることをきちんと確認してから発表したい」という気持ちを持ちつつも、「このままではいざ発表できる段階になったときにかなり後手に回ってしまうのでは」という気持ちにもさいなまれます。

見切り発車による知名度の陣取り合戦に参加したい気持ちを抑えつつ、地道な取り組みをする毎日です。

人工知能 活用の定義

今はディープラーニングによる画像認識関連はOSSもかなりありますし、その実装例やノウハウもかなり共有されています。
なので 人工知能 でとりあえずアピールをしたければ、「 人工知能 による画像認識ソリューションを開始しました!!」とか言うのはカンタンです。
でもそれは所詮それだけのもので、参入障壁となるものがありません。

ゼロスタートはレコメンドエンジン提供当初からベイズ推定に基づいたロジックを搭載しておりかなり早い方だったと思うのですが、これは社内で成果が上がることを十分確認してからの発表にも関わらずでした。
ベイズ自体が当時バズワードでなかったためだと思います。

当社はディープラーニングが注目を集めた時、これはECにも活用するチャンスがあると考えて、まだ 人工知能 がバズワードではない頃(おそらく直前くらい?)から研究開発に取り組んでいましたが、研究を進めるに連れてディープラーニング自体をマーケティングに活用するのはまだ早いと思うに至るようになりました。

ディープラーニングがバズワードになったのであればそれで平和だったような気もしますが、ある時点からディープラーニングではなく 人工知能 やAIがバズワードになり、ここから情報の混乱が始まったように思います。

人工知能 の定義自体結構曖昧で、今となっては機械学習だろうがニューラルネットワークだろうが、コンピュータで演算するなら 人工知能 くらいの言われようです。
毎日のように登場する発表やリリースを見ていると、「何が?」とか「どこが?」みたいなものの割合がどんどん高くなっており、正直心配しています。実際先週あたりの新聞に 人工知能 を使ったマーケティングオートメーションの記事があり、現状は行動履歴をつかってお薦めする機能に限定されている、とありましたが「それって前からある普通のレコメンドじゃないの??」とびっくりました。 そしたら当社は9年前から 人工知能 の会社です(笑

人工知能 がブームになる事自体は良いことだと思います。
それによって研究者が増え、研究が進み、予算もついて成果が上がれば言うことはありません。
ただ、「うちのソリューションもとりあえず人工知能って言っておこう」みたいなのが増えてしまうと、それに対するガッカリ感で3度めの 人工知能 ブームの終焉を招きかねません。

マーケットと事業化

そもそもマーケティングにおいては、どの手法が最適かはジャンルにかなり左右されます。
嗜好性というか指向性が高いジャンルは単なる相関でもかなり良い結果が出ます。
一方で家庭用品などは相関はあまりうまく機能せず、商品DNAのようなアプローチが今のところは有望です。

ベイズ推定を使うアプローチはニュースなどのテキスト系だとうまく機能することが多いですし、画像や音声はディープラーニングは有望であるといえるでしょう。

人工知能事業化
にも関わらずジャンルに関係なく十把一絡げに「 人工知能 マーケティングソリューション!」というのは、正直かなり怪しい感じがします。
パンケーキブームだからうちもパンケーキをメインにしよう!という感じでしょうか。

ビジネスというのはいつでも早すぎてもダメですし遅すぎてもダメなものです。
遅すぎるよりは早すぎるほうがまだマシですが、早すぎる期間の投資はROIが低くなりがちです。

当社でもレコメンドに取り組んだのはまあまあ早い方でしたが、マーケットがそこまで大きくならなかったこともあって当時の競合他社は2社ほど残してだいたい撤退かピボットしてしまい、今ではメイン商材として提供を続けているのは当社含めて3社ほどです。

ただ、今はレコメンドがメイン商材ではない会社が「以前から 人工知能 に取り組んでいました!画期的なレコメンドソリューションです」というアピールをするケースはあるかもしれません。

サイト内検索エンジンはかなり後発でしたが、これは幸いハイエンドに特化したことと、そのハイエンドの競合だった大企業が軒並み撤退したことで、ハイエンド向けという意味ではわりと随一のポジションを取ることが出来、しかも今から他社が参入してもあまりメリットがないという状態になりました。

ハイエンド向けの検索というのは正直市場が小さいため、DMPなどのようにたくさんの会社がしのぎを削って値下げ合戦、という状況では成立しないと思います。

人工知能 を活用したソリューションについては、まだ正直なんとも言えません。
ブームに乗っただけのソリューションではなく、地に足の着いた、導入側にメリットのあるソリューションとなるであろう確信を持ってから満を持して提供を開始する予定です。

そのための取り組みの一つとして、産総研の 人工知能 技術コンソーシアムに加入をしました。 産学連携しつつ、実際にブランド・リテール企業にとって役に立つソリューションの研究開発を続けていこうと思います。

まだまだ研究開発の割合が高い分野ですから手探りではありますが、そうした中にこそ事業に取り組む面白みというものがあるのだとも思います。


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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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