Amazon の変化とビジネスチャンス


Yahoo!によるZOZOの買収

ZOZOがYahoo!グループに入るというのはEC業界的には間違いなくビッグニュースですが、サプライズかというとそれほどでもない、というのがEC業界の人たちの感想ではないでしょうか。

むしろ「なるほどそう来るか」という感じのほうが強いかと思います。

良い悪いではなく、こうしたM&Aにおいては概ね、メリットとしては「規模の増大」、デメリットとしては「推進力の減少」というのは間違いなく起こりますから、メリットをデメリット以上にできるかどうかというのが鍵になることでしょう。

一般的にはデメリットを楽観視しすぎていたため思ったよりうまくいかない、というケースが多いのではないかと思います。

飲食店の場合「500店舗の壁」というのがあるそうですが、ECにおいても規模によるハードルというのはあると思います。

ZOZOにしても公開企業であるため毎年同等以上の成長を期待されるという枷が、今回の展開につながる一因だったのではないでしょうか。

EC自体の業界成長率はまだまだ高いのですからそれを期待してZOZOも株価が高いままだったら、もしくはPBなどの各種施策がうまくいって株価を押し上げられていたら、また違ったのかもしれません。

ネット広告における発明

ECにしても店舗にしても、ブランド(メーカー)なのかリテールなのかモールなのか、という分類はありますが、ECの場合にはそれに加えてメディアなのか、という選択肢が加わります。

そしてメディアという選択肢はリテールやモールと共存するのが、ちょっと店舗と違うところだと言えます。

なぜWeb業界がその登場以来25年以上経過してもホットでいられるかというと、メディア化=広告収入によるビジネスモデルが成立する余地があるため、というのがその大きな理由の一つです。

ネット広告における発明

今はアプリも増えてきたのでWebというよりネットというほうが正確ですね。

そして私は今までに登場したネット広告でもいまだに最も大きな発明の一つが、 検索連動広告 だと思います。

かつてはオーバーチュアから始まり、Googleの爆発的成長の原動力となりました。

検索連動広告 がなぜ大きな発明であったかというと、「検索というのは間違いなくその瞬間のユーザーの興味の対象を示している」からです。

購買履歴や閲覧履歴に基づく広告は、その瞬間の興味を示しているとは限りません。

コンテンツフィルタ(見ているコンテンツに基づく広告。動画広告も同様)は履歴よりはその瞬間の興味を示していますが、何かを探している状態ではないため興味の強弱で言うと弱いと言えます。

そしてこの 検索連動広告 をECにおいて活用して大成功したのがタオバオです。

Amazonのビジネスモデルの変化

タオバオは出品される商品をコンテンツとして考え、そこからの広告収益を大きな収益源としています。

つまりビジネスモデルとしてはコマースというよりメディアに寄っているということです。

広告というのは本質的には「最終消費を目的としている」ことが多いので、コマースというのは広告メディアとして大変親和性が高いと言えます。

ヤフーも以前手数料無料化を実施した際に、タオバオモデルを目指すと発表していました。

ただタオバオはアリババグループなので、メディアというかコマースにおける経済圏のサイズが違います。

アリババグループにはタオバオもあれば天猫もあるので、言ってみれば楽天とメルカリが合体しているようなものです。

そしてこれと同じモデルを最近急速に推し進めているのが Amazon です。

もともと Amazon はリテールショッピングサイトとしてスタートしました。

そのうちマーケットプレイスも開始しましたが、以前はどちらかというと「ユーザーにとってのラインナップを充実させる」という趣旨が強く感じられ、 Amazon の強みといえば質の高いマーチャンダイズだったと思います。

マーケットプレイスメディアへのシフト

ところがここ2年ほど、 Amazon はメディア化に舵を切り始め、そして去年の終わりくらいからそれを隠さなくなったというか、あからさまにメディアシフトを推進するようになりました。

業績発表においても、むしろ 検索連動広告 の収益性を強くアピールするようになっています。 ※1

私が思うに、 Amazon は最終的には、リテールとしてはデジタルコンテンツ(Kindle、 Amazon Prime ミュージックとビデオ)のみを販売し、あとはすべてマーケットプレイスに任せたいと考えているのではないでしょうか。

そうなると物販に対するアプローチはマーチャンダイズよりもコンテンツとしての要素が強くなっていきます。

ここ最近の Amazon の検索結果の操作というかロジックの変更 ※2 とレビューの信憑性の低下は、まさにそうしたアプローチを証明していると言えます。

私は以前は年間に100回以上 Amazon を使用していたヘビーユーザーでしたが、明らかに最近は以前に比べて探している最適な商品を見つけるのが大変になりました。

まず最適の商品(と自分が思うもの)が1ページ目に出ることが減りましたし、明らかに信憑性の低いレビューが増えたためレーティングだけではなくレビュー自体を読まないと、適切な判断ができなくなってきています。

加えて Amazon 自体が扱っている商品よりマーケットプレイスのほうが比率が高くなっているため、マーケットプレイスのプレイヤーの信頼度もチェックしなくてはいけなくなりました。

コマースプレーヤーの新たなチャンス

先日はある商品を購入したところいつまでもそれが届かなくて、念の為その出品者のレビューを楽天でチェックしたところ評価がとても低くてキャンセルした、という事態に見舞われました。

Amazon ではその出品者のレビューは大変高かったのですが、よく読むとどうも信憑性が低そうな記述が多かったのですが、今後は商品だけではなく出品者のレビューの信憑性もよくチェックしなければと思うとちょっとうんざりします。

ただ、キャンセル処理自体はマーケットプレイスですが大変スムースに行われ、このあたりはまだ Amazon を使うポジティブな理由とも感じられました。

いずれにしても Amazon は今の所、リテールコマースよりもマーケットプレイスメディアにシフトしているように見えます。

もしこのビジネスシフトが続くようなら、そこには他のコマースのプレイヤーの新たなチャンスが生まれるのかもしれません。

当社のEC商品検索エンジンの導入先流通額も確認できているだけで1.3兆円、おそらく全部合計すれば1.5兆円は超えていると思います。

これはほぼ Amazon の売上額 ※3 に匹敵し、ヤフーショッピングとLOHACO ※4 とZOZOの合計 ※5 の1.5倍にもなります。

今後も国内最大級の商品検索エンジンのサプライヤーとして、引き続き利便性の高いECサイトの構築に寄与していきたいと思います。

 

▼参考記事▼
※1 Amazon決算、増収増益だが予想は下回る クラウドと広告が好調
(引用元:ITmedia NEWS_2019年7月26日付)
※2 問題になりそうなアマゾンの「偏った商品検索」
(引用元:livedoor NEWS_2019年9月18日付)
※3 アマゾン日本事業の売上高は約1.5兆円【Amazonの2018年実績まとめ】
(引用元:ネットショップ担当者フォーラム_2019年2月18日付)
※4 ヤフーのショッピング取扱高は22%増の7692億円、eコマース取扱高は2.3兆円【2019年度】
(引用元:ネットショップ担当者フォーラム_2019年5月7日付)
※5 業績ハイライト
(引用元:株式会社ZOZO 業績ハイライト)


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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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