チャットボット とリキッドコンシューマー


チャットボット というプチバズワードと人工知能

最近何かと話題の チャットボット 。

予想としてはプチバズワードくらいの盛り上がりかな、という感じです。

チャットボット も人工知能ブームの流れから派生したものですが、これは実はダブル人工知能ともいうべきものです。

表の人工知能と裏の人工知能とでも言いますか。

そこを正確に見極めておかないと、ダメというか役に立たない チャットボット になってしまうことでしょう。

まず一つ目、表の人工知能はインターフェースとしての活用です。

チャットに入力されたテキストを文脈解析して意味を見出す部分の処理です。

ちなみに チャットボット というか日本語でチャットというときは入力がテキストのイメージですが、本来chatは会話なのでSiriのような音声が入力になるケースもありえます。

その場合、音声をテキストに変換するという処理がさらに前段に加わるので、表の人工知能のなかにさらに2つの人工知能が含まれているということになります。

人工知能による自然言語処理

文脈解析して意味を見出すような処理は、NLP(自然言語処理)と呼ばれます。

ちなみに人工知能ブームのきっかけとなったディープラーニングは、音声をテキストにする処理が得意です。

ディープラーニングとPLSAそれぞれの特性

現在のところ一番活用されているのは映像、画像に関する処理だと思いますが、映像や画像と音声はデータとして似ているため、音声に関する処理も実は得意分野です。

どちらも周波数という特性を持っており、畳み込みという処理が有効です。

ただディープラーニングの内部で使われるロジックとしては、現在のところ画像に関してはCNN、音声に関してはRNNのほうが向いているというような違いはあります。

このあたりはまさに日進月歩で進化しており、興味深いところです。

またディープラーニングはNLPでも活用が期待されていますが、NLPに関してはディープラーニング以外の有効なアプローチも存在します。

たとえば当社が先日レコメンドエンジンに搭載したPLSAは、本来は文書データからその要約、すなわちトピックを抽出するために研究されていた手法です。

ディープラーニングもPLSAも、「大量のデータから要点を抽出する」という意味では、その本質は同じです。

人工知能や機械学習を活用する場合、それを使って「何を得る」かを考えることが重要です。

大量のデータから要点を抽出するのは、要点を得ることが目的です。

ディープラーニングにおいては、要点は特徴量と呼ばれます。

主成分分析においては主成分と呼ばれたり、文書の場合にはトピックとも呼ばれますが、それらは言い方の違いだけで、「要点」という意味では同じです。

表の人工知能と裏の人工知能の本質

音声が入力だったとしてもテキストが入力だったとしても、 チャットボット の表の人工知能においてそこから取り出されるものは「意味」です。

たとえば「今の天気を教えて」から取り出されるのは「今」「天気」「教えて」です。

「赤坂でオススメのレストランを教えて」であれば、「赤坂」「レストラン」「オススメ」「教えて」となります。

チャットボット の場合、その入力は多くが「要求」であることでしょうから、こうした文脈解析は比較的容易であるといえます。

チャットボット

一方で「ひまなんだけど」という入力から文脈を解析するのはハードルが上がります。

さて一方で裏の人工知能ですが、どちらかというと チャットボット の本質はこちらです。

表の人工知能、すなわちインターフェースから得られた「意味」に対して、適切な処理を行い結果を出力するという部分です。

先ほどの「今の天気を教えて」という例であれば、裏の人工知能の出番はありません。

現在の天気のデータを調べて出力するだけです。

ただ「明日の天気を教えて」になると、話が変わってきます。

単純な処理であれば、天気予報データにアクセスして明日の天気のデータを出力するだけですから、やはり人工知能の出番はないですが、天気予報というのはそれ自体がビッグデータ解析であり、人工知能の活用が期待されている分野でもあります。

ですから、「明日の天気は?」と聞かれたら単に天気予報データをとってきて教えてくれる、というのはそれはそれでお手軽 チャットボット ですが、例えば気象庁や気象協会が天気情報 チャットボット を作ったとしたら、表の人工知能よりも裏の人工知能、すなわち膨大な気象データから天気を予測する部分のほうがその チャットボット の役割の多くを占めているといえるでしょう。

もう一つ例を上げてみましょう。

「今日上がりそうな株を教えて」と チャットボット に伝えたとします。

この文章も、表の人工知能の処理はカンタンです。

一方で、上がりそうな株というのを、アナリストのサイトにアクセスして出力するだけならカンタンですが、株価の推移を解析して予測をするとしたらそれはかなりレベルの高い、また人工知能の活用がまさに期待されるような分野における処理となることでしょう。

ところで、天気予報や株価の例の場合、表の人工知能がなくてもサービスとしては成立します。

リキッドコンシューマーを捉えるインターフェース

天気予報なら日付と地域を入力させるインターフェースがあればいいし(実際現在はそうですが)、株価の場合にはさらに単純でしょう。

ということは、表の人工知能は本質的にはいらない、すなわち チャットボット は本質的な意味はないのです。

ところが、「本質的な意味がないものが重要」ということは、世の中にはたくさんあります。

日本ではまだあまり使われない表現ですが、IABの提唱する「リキッドコンシューマー」という概念があります。

リキッドは液体、すなわち流動的な消費者ということです。

PCからスマートフォン、メディアからメディアへと渡り歩くユーザーをどうキャッチするか、はこれからのマーケティングにおいて大変重要です。

オムニチャネルに注目があつまったのも本質は同じです。

こうしたリキッドコンシューマーに、「ここに問いかければなんでもおしえてくれる」というインターフェースを用意するというのは大変有効です。

Facebookが執事サービスを提唱するのも、同じ狙いでしょう。

実はこうしたアプローチは以前にもありました。

今ではまったく聞かれなくなりましたが、「ポータルサイト」がそれです。

とりあえず浮気な消費者が最初にアクセスする口を作ろう、というのは、いつでも有効な手法なのです。

ただそれが「 チャットボット 」という、ちょっとキャッチーなフレーズを得て、さらには人工知能というこれまたバズワードと組み合わさることで、ちょっとしたバブルになっているというのがその実情です。

つまり、 チャットボット というのは表と裏にわかれ、表は本質的な部分というよりは、ますます流動化する消費者をつかまえるためのjust anotherなインターフェース、裏は消費者に有用な情報を提供するための本質的な部分、ただこれは チャットボット の有無に関わらず存在し、進化していくもの、ということができます。


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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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