カゴ落ち ならぬ検索落ち


WEBサイトの改善ポイント

先日とある大手のWEBコンサルティング会社のトップの方と話をする機会がありました。

当社はレコメンドエンジンも提供していますが、主力はやはりEC向けのサイト内検索エンジンです。

このコラムでもたびたび触れているように、ECサイトの商品検索というのは「検索条件にヒットする商品を単に表示するもの」ではなく「検索条件やその他オーディエンスデータからユーザーに商品を提案するもの」という考え方を説明すると、かなり納得していただけました。

そして同時に、「WEBサイトの改善の一連の流れの中で検索というのは見過ごされている」というコメントがありました。

これこそが、当社がずっと一貫して、ある意味ウケの悪いEC向け検索エンジンに力を入れている理由です。

ECのサイトにおける検索の改善というのは、大きな伸びしろがあるにも関わらず見過ごされている筆頭ともいえる部分なのです。

WEBの検索改善

ECにおける制御モデルとは

ビッグデータや人工知能を活用して仮に良い予測ができたとしても、それだけではコンバージョンの向上には結びつきません。

その予測をユーザーの行動に影響を与えるように出力しなければせっかくの予測も無意味となってしまいます。

この「行動に影響を与える部分」を制御モデルと呼びます。
制御モデルというとわかりずらいかもしれませんが、商品のオススメは全て制御モデルです。

リアルの場合、お店の看板、店内のPOP、店員による接客、陳列なども全て制御モデルだといえます。

ECにおける制御モデルはもちろん画面です。
画面を大別すると、大きく3つにわけることができます。

1つ目はトップやLPなどの流入点、2つ目は検索結果画面、3つ目は商品詳細画面です。

トップやLPももちろん行動予測に基いて商品選択について訴求する大きなチャンスです。

そして検索結果というのは商品選択の訴求の塊であるといえます。

商品詳細画面は、この時点で任意の商品にフォーカスしているので商品選択を訴求するのではなく商品自体の魅力を訴求するポイントです。

どれも制御モデルなのですが、大きく分けるとトップやLP、検索結果は「商品を選択する」ことに関する制御モデル、商品詳細は「商品の購入を決める」ことに関する制御モデルであるといえます。

カゴ落ち の理由

ところで、最近注目を集めているキーワードに「 カゴ落ち 」があります。

もちろん カゴ落ち という概念はずっと以前からありましたが、このところ良くメディアで見かけます。

商品を一旦カートに入れたにも関わらず、決済に至らないケースです。
これは確かに大変もったいない機会損失です。

そこにフォーカスしたくなるのはよく理解できます。
そして、 カゴ落ち というのは「フォーカスしやすい」場所でもあるのです。

カゴ落ち

せっかくカートに入れたのに放棄されてしまう、これは商売をやっていれば誰でもなんとかしたいと思います。

それにカートに入れるという大変トラッキングしやすい行動であることも、注目されやすい理由でしょう。

一方で、 カゴ落ち する商品というのは「どうあっても買わない」ケースも多々あります。

商品をカートに入れてみたものの、そこから離脱するというのは結構なハードルがあることが多いのではないでしょうか。

例えばわかりやすい理由は「高いから」です。
このハードルを超えるのはなかなか大変です。

自分がカート放棄するケースを考えてみても、「配送料が商品価格に対して高い」「もっと安いマーチャントがありそうな気がする(そして実際ある)」「最低購入価格に届かない」など、金額にまつわる理由がほとんどです。

「カートに入れるところまでいったのに放棄するというのは逆によっぽどの(改善できない)理由がある」とも考えられるのです。

検索落ちとは

冒頭のWEBコンサルティング会社の方とのやり取りでも出たように、検索というのはあまり注目を集めているとは言えません。

検索が注目を集めていないということは、検索結果からの離脱、言ってみれば「検索落ち」も注目を集めていないということです。

検索落ちに注目しているなら検索の改善の必要性に気付いているはずだからです。
見過ごされがちな検索落ちですが、ここには大きな伸びしろがあります。

検索落ちするというのは、だいたいが買おうと思う商品を見つけていない状態です。

「興味をもってカートに入れた商品を放棄した状態」よりも、「興味をもつ商品を見つけていない状態」のほうが、改善というか工夫の余地は高いといえます。

集客に力を入れる、 カゴ落ち の防止に力を入れる、でもこの2つの間にある「商品選択に力を入れる」というのがぽっかりと抜けやすいのはなぜでしょうか?

必要部分の改善

またレコメンドと検索の比較も興味深いものがあります。

当社はレコメンドエンジンも検索エンジンに次ぐ主力製品として販売しているため、レコメンドに関するお問い合わせもよくいただきます。 そして実際、検索よりもレコメンドのほうが多いのです。

でもレコメンドというのは、言ってみれば「これもいかがですか?」というアプローチです。

もちろんこれも良い制御モデルではあるのですが、「検索という商品選択のメインの部分をないがしろにして導入しても意味が無い」のです。

あくまで商品選択は十分に良く機能している、すなわち検索落ちは対策済みという状態ではじめて、レコメンドに取り組む意味が出てくるといえます。

それどころか、レコメンドは検索結果に取り込まれても良いものです。

結局ECサイトの検索結果というのは全てがオススメです。

単に協調フィルタリングとか集合知のような、機械学習アプローチによるものをレコメンドと呼んでいる(呼んでいた)だけなのです。

検索の改善というのは必要十分で言えば必要な部分の改善です。
一方でレコメンドや カゴ落ち 対策というのは必要十分の十分にあたる部分です。

UXとして考えてみると、必要な部分がダメなのに十分な部分に力を入れているのは、「おせっかい」「押し売り」というマイナスなイメージにつながりやすいでしょう。

まずはユーザーが快適に自分の求める商品を探しやすくすることが重要です。

そしてその上で、 カゴ落ち やレコメンドの対策に着手するのが手順として妥当ではないでしょうか。


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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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