成長するECとその課題

オムニチャネル の実態

野村総研のレポートで、B2C向けEC市場は2014年の12.6兆円が2021年には25.6兆円という予測がなされています。

私はもう少し行くんではないかと思っています。
さてそうなってくるといよいよ オムニチャネル というか店舗とECの食い合いが始まります。

オムニチャネル 」というキーワードは、元々どちらかというと「消費者との接点を増やしシームレスに連携させる」というプラスのイメージで捉えられてきましたが、その実態は「オンライン(EC)の拡大によってオフライン(店舗)との競争が激化するなかでオフラインがすべきこと」です。

折しも11月から日本でもAmazonによる「Prime Now」がスタートしました。
スタートした日は私も何台もAmazon Prime Nowのトラックを見かけました。

1時間で届くなら、食料品などに関しても外出して買いに行くのをやめて届くのを待とうという選択は十分にあり得ます。
私もPrime Nowを使ってみましたが、まださすがにスタートしたばかりでこなれていない感じは受けました。

Prime Now

誤解のないようにですが、ちゃんと配達時間どおり届きましたし、アプリの挙動や操作性も問題ありませんでした。

ただ、正直2500円注文するというのはかなりハードル高いというのと、ラインナップがまだまだ充実していません。
ラインナップが充実すれば、2500円はさほど高いハードルではなくなるかもしれませんが。

あと配達時間が、19時40分くらいの時点で ・1時間以内→+890円 ・20-21時→無料 という、実際に受けるサービスのメリットと料金がバランスしていない感じでした。
これが19時の時点だと1時間以内か2時間以内かとまあまあの違いになりますが、こういったあたりは今後もっと弾力的になっていく気がします。

AmazonとWalmartにみる オムニチャネル

食料品というものは、利便性や商品力で総消費が増えるということがあまりありません。

支出額はおおむね決まっていて、それがどこか(オンラインはオフラインか)という比率が変わるだけです。

こうしたマーケットクリエーションのない、ゼロサムというかパイの取り合いになるマーケットはまさに オムニチャネル の主戦場となっていくでしょう。

そもそも オムニチャネル というバズワードが出る前から、Amazonの台頭によって街の本屋が潰れるという現象はよく知られたことでした。

つまりもう10年も前から オムニチャネル はジャンルによっては取り組むべき課題であり、その対象となるジャンルが拡大しつつあるというのが現状です。

そもそもEC専業と店舗+EC( オムニチャネル )というのは、両方のメリットを持っている分だけ機能的には オムニチャネル 側のほうが有力なはずです。
ではなぜWalmartとAmazonのようなバトルが起こるのでしょうか。

今年になってAmazonが時価総額でWalmartを逆転するという現象が起きました。
トータルの売上ではAmazonはWalmartの1/5しかないのですが、ECに関して言えばAmazonはWalmartの7倍あります。

つまり株式市場は、ECの売上をより重視している(将来価値が高いと見ている)ということになります。

いくらECの成長予測が高いとはいえ(そしてその分店舗の売上が減少するとはいえ)、この先10年という程度ではまだまだEC比率は10%くらいという予測で、ECのほうが店舗を大幅に上回るという予測があるわけではありません。

ではなぜAmazonのほうが時価総額が高くなっているかといえば、一つには採算性の違いが挙げられます。

店舗の場合お店を出す土地や建物、そのお店のスタッフの人件費などがかかります。
それに対してECの場合にはサーバや回線の増強が必要ですが、店舗に比べて売上拡大に対するコスト増加が少ない、すなわち利益の増加が大きいという期待があります。

最初に取り組むべき課題とは

株価(時価総額)というのは売上にも影響されますが本質的には将来利益に比例するため、利益率というのは重要な指標です。

ただここで、たとえECのほうが高い将来価値が期待されているとしても、Walmartがそれをやらない理由はない、というポイントがあります。
実際問題WalmartはトータルではAmazonの5倍の売上があるのにECでは1/7しかないのです。

これは何故か?それはECに対する本気度の違いだと言えるでしょう。

もちろんWalmartは オムニチャネル を重視し、戦略の中でもECの成長にはかなり力を入れています。
ただAmazonのほうがECに関してはもっともっと本気だ、ということです。

オムニチャネル を標榜する企業とEC専業の企業では、EC専業のほうがより「ECに本気になる傾向がある」というのは、これはまあわかります。
ただしこれは「必ずそうなる」というものではありません。

言ってみれば オムニチャネル 側のほうが「やればできるのにさぼっている」ことが多いということです。
大企業が新サービスを出して不発に終わることが多いのと似ています。

EC-strategies

オムニチャネル というバズワードのブームの時期は終わりました。

これからは店舗を手掛ける企業が、どうECに本気で取り組んでいくかが試される時代の始まりです。

そこで必要なのは「 オムニチャネル 戦略」というなんだかよくわからないものではなく、もっと単純に「EC専業に負けないECの構築」がまず最初に取り組むべき課題なのです。

ECとしてEC専業に負けているのに、 オムニチャネル を標榜してもしょうがありません。
まずは良いUXを持つECを構築し、店舗と連携するという オムニチャネル に取り組むのはそれからです。

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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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