オススメとレコメンド


レコメンドの認知を高めたAmazon

当社のZETA CXシリーズでも レコメンドエンジン は販売しておりますが、レコメンドは初期に割と過大評価されてしまったためにマーケットが過当競争になってしまったという、少し不幸な経緯があります。

これまで何度か社内外で執筆したり講演した内容ではありますが、簡単にまとめてみます。

まず、レコメンド自体が大きく注目された理由は間違いなくAmazonです。

2005年から2006年頃、それまでのECにはなかったレベルでオススメが表示されるようになりインパクトを受けたユーザーが多かったと思います。

当時のいわゆるAmazonレコメンドというのは、基本的なアプローチは商品相関でした。

バスケット分析やアソシエーション分析とも言われますが、簡単に言えば「Aを買った人はBも買っています」というやつです。

この手法の特徴として、効果の高い低いが商品ジャンルによって相当違うという点があります。

高い効果を発揮する商品ジャンル

これは別にマーケティングやテクノロジーに詳しくなくても、ちょっと考えれば容易にわかることです。

例えば、小説、漫画、映画などで自分の好きな作品を考えてみてください。

その他にも好きな作品というのは、結構似通ってくるのではないでしょうか。

そして、当時のAmazonは主に、こうした手法が高い効果を発揮する商品ジャンルを主に取り扱っていたのです。

このため世の中的に、「Amazonのレコメンドはすごい!世界を変える!」みたいなヒートアップした状況が発生してしまいました。

余談ですがAmazonレコメンドと同時期に個人的に同じようなインパクトを受けたサービスで、はてなのおとなりページというものがありました。

これは複数のブックマークによる相関を計算して、似たページを出力するというものですが、ウェブページというのも当時のAmazonの商品ジャンルと同じく、こうしたアプローチが高い効果を発揮しやすいカテゴリだと言えます。

こうした手法は簡単に書くと、興味を多次元ベクトルで表現しその余弦(コサイン)を計算するというアプローチです。

そういえば以前、ネットフリックスもネットフリックスプライズというレコメンド手法の大会を開いていましたが、いずれにしてもこうした機械学習アプローチによるレコメンドというのは、ジャンルによっては高い効果が出るのは間違いありません。

拡大解釈された レコメンド

一方で、世の中で購入されるすべての商品においてこうしたAmazonレコメンド的手法が高い効果を発揮する商品群の占める金額的割合というのは、そこまで高くありません。

やはりダントツで高いのは食品ですし、それに続いて高いのは水道光熱費、教育娯楽、外食、住居という順番です。

この中でAmazonレコメンドが高い効果を発揮するとしたら、娯楽の一部と外食の一部ではないでしょうか。

ただここで、オススメと レコメンド は違う、という点について意識する必要があります。

レコメンドとオススメの関係

言葉の意味としてはオススメとrecommendは同じものですが、日本語的意味で言えばレコメンドというのは概ね、Amazonレコメンドのように機械学習によって集合知から導かれるオススメのことを指していると思います。

一方でオススメというのは、店員や識者によるオススメ(いわゆるキュレーション)や特売品など、導かれるというよりは教えてあげるようなアプローチも含むというかそちらのがメインとなります。

ここで重要なのは、元々はオススメというのはこうした、より高い商品知識を持っている人がそうでない消費者にアドバイスという形で提供していたものでしたが、Amazonレコメンドは購買履歴を活用することでこうした識者に頼らなくてもいい、もしくは識者でも気づかないようなオススメを提供しうるので注目された、という経緯があることです。

ただそれが、「ジャンルによっては」という前提がついていたにも関わらず、いつのまにか「もう識者に頼らなくても適切なオススメが得られるようになった」というような拡大解釈が広まってしまったのが、ちょっとレコメンドにとっては残念な展開だったという側面があるというだけです。

オススメに総合力が必要となった

Amazonレコメンドはそれ自体、今でもジャンルによっては非常に有効なアプローチです。

ただ過剰に評価されすぎたため参入企業が増えることで過当競争になり、逆にマーケットとしては若干ダウントレンドとなってしまったというだけだと思います。

いち消費者として考えてみれば、例えば漫画や小説に関してはこうした商品相関によるオススメを知りたいですし、一方で食品に関しては自分の健康状態とその時の値段の傾向などから総合的にオススメを知りたいと思いますし、家電や専門性の高いジャンルについては先達やプロショップの店員の意見も聞いてみたいと思います。

EC化率が高まり、扱われるジャンルが増えてきている今となっては、様々な手法をどのように活用するかという、総合力が問われる時代になってきていると言えるでしょう。

例えば当社では、 レコメンドエンジン よりも検索エンジンのほうがより多くの導入事例がありますが、この検索エンジンにおける検索クエリというのは実に良いオススメの根拠となりえます。

「どういうキーワードで商品を探しているか」「どういう並べ替えを重視しているか」などを消費者がわざわざ入力してくれているのですから、これをオススメに活用しない手はありません。

マーケティングの本質にあるのはオススメ

そもそも店頭で店員さんに自分の需要の説明をしているシーンを想像してみれば、店員さんがそこで教えてくれるのは条件に厳密にマッチしている商品ではなく、質問内容を元にした「オススメ」であることがほとんどではないでしょうか。

すなわち、検索結果というのは本質的には「オススメ」であるべきなのです。

オススメ

キーワードに機械的にマッチする商品がオススメであるとは限らないということです。

基本的にはマーケティング手法というのは、何をとっても「オススメ」なのです。

MAにしてもAIにしても最近流行りかけているOMOにしても、目指すところはより消費者が気に入って購買に至りそうな商品を提示し、また購買する決断をする手助けをすることがその役割なのです。

そして、レコメンドはその中においてジャンルによっては高い効果を発揮する、いち道具だと考えれば、その有効な活用方法が見えてくるのではないでしょうか。


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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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